2007年10月31日 とある映画その2
赤目の鳥
今日は1日だけ「助っ人」として急遽セットに戻った。
・・・出演はしないけど、重要なシーンの撮影だったんだ。
俺が戻る事によって、何らかの助けになるはずだ。そう思った。
夜行便で一睡もできず、徹夜でセットに入って活動した。
コーヒーをがぶ飲みし、眠気を抑えた。
・・・きっと、ここに来た意味はあったと思う。
2007年10月22日 とある映画その2
まどろみ
まだ追加撮影があると思うけど、
とりあえず、今日で俺の全てのシーンの撮影が終わった。
終わった。・・・終わった!
・・・終わった・・・のかな・・・?
困ったぞ。全く実感が無い。
・・・俺は本当に撮影に参加してたんだろうか。
2ヶ月ぶりに家に帰れば、
少しは落ち着くだろうか。
さあ、帰ろう!!
・・・ありがとう!ありがとう!!ありがとう!!!!!
2007年10月18日 とある映画その2
サーカスは空に舞う
俺は今日、自分のコメディの「師匠」と、生まれて初めて会った。
俺がアメリカでコメディを目指すきっかけになったのは、
「師匠」が70年代にイギリスでやっていた、
コメディテレビシリーズを見たからだ。
その挑戦的で社会風刺の効いたコメディ番組を観た瞬間、
俺は頭を「16トンハンマー」で
思いきりぶっ叩かれたかのような衝撃を受けたんだ。
・・・何なんだ、この面白い人は!
それから・・・、俺は何度も何度も、
繰り返しそのコメディ番組を観続けた。
字幕を出して、セリフを1行ずつ止めて、
辞書を引いて意味を理解し、更にそこから技術を盗む。
俺の英語でのコメディは、大部分が彼の技術を盗んだものだ。
そこに子供の頃からやって来た、
「コメディ舞台劇」の要素を混ぜたの物が、自分流のコメディだ。
だから、この映画に参加できたのは、誰よりも「師匠」のおかげなんだ。
「技術を盗むって、それは素晴らしい事だ。
私自身、自分の昔の技術をたまに盗むんだよ。」
・・・コメディの天才が目の前に2人。
彼らの話す言葉は英語じゃない。
他の誰にも理解できない「コメディ語」で話している。
俺は・・・、ここに居れる事自体が光栄だ。
あと数日間、遠慮なく、盗んで、盗んで、盗みまくるつもりだ。
英語もロクに喋れないのに、英語でコメディをやる。
人生を賭けて、いつかは「師匠」を抜いてみせる。覚悟しろ!
2007年10月17日 とある映画その2
ボオッ、ガチャン、バシャー
今日は、今までで一番規模のデカいシーンの撮影だった。
少しでもシーンを面白くするため、
俺は最大限の注意を払い、全力で身体を張った。
そして、自分のシーンのプレイバックを見て、
久しぶりに満足した。
こりゃ面白いっ・・・はず。たぶん。
撮影も、もう少しで終わりだ。
悔いが残らないよう、全てを出し切ろうと思う。
2007年10月15日 とある映画その2
漂流記
撮影が終盤に差し掛かって来たが、
ここに来て、俺は急激に自信を失って来た。
自分がやっている事は、
果たして本当に面白いんだろうか・・・?
そんな不安がフツフツと沸いて来る。
コメディ映画なので、「笑える」か、「笑えない」か、
それは観客に見せるまで何の確証も無い。
自分が面白いと思っても、本当は面白く無いのかもしれない。
その答えが出るのは・・・、ずっとずっと先の話だ。
・・・実にもどかしい。
今は、監督の声に耳を傾け、
それを羅針盤として霧の中を進もう。
2007年10月09日 とある映画その2
時針よ止まれ
今日は疲れが出て、集中力が散漫だった。
くそ。まだまだ覚悟が甘いな。
こんな事は本来あってはいけないんだ。
撮影は「一日平均13時間」で進むので、
体調管理には本当に気をつけないといけない。
撮影中の生活は、大体こんな感じだ。
04:30 起床
05:00 今日のシーンの予習
06:30 現場へ
07:30 朝食・メイク
08:00 現場リハーサル
08:30 撮影開始
20:00 撮影終了
20:30 ホテルに到着 夕食・風呂・メイク落し
21:00 明日のシーンの予習
22:30 就寝
04:30 起床
05:00 今日のシーンの予習
06:30 現場へ
俺は体力が無いのか、もう疲れてしまった。
「現場入り」が午前8時の時は、
2時間も余分に寝れるので、かなり嬉しい。
・・・この感覚は、新聞奨学生をやってた時に似ている。
あの時は30分間の睡眠が何よりの至福だったっけ。
俺は最低6時間は寝ないと、演技に支障が出る。
なのに今日は・・・4時間半しか寝てない。
演技に影響が出るのは当然であって、自業自得だ。このバカめ。
さあ、今日はしっかり寝て明日に備えよう。
2007年10月05日 とある映画その2
籠の中でスラローム
映画というのは、本当に怖い。
一瞬のミスが、一生残ってしまう。
そして消したくても、消せない。もどかしい。恐ろしい。
・・・だからと言って、ミスを恐れて萎縮するわけにもいかない。
よし、今は監督を信じ、俺は次のシーンに集中しよう。
2007年10月03日 とある映画その2
丸くなった小石
昨日から今日にかけてのシーンの撮影は、かなり体力を消耗した。
たとえ自分が映っていなくとも、
共演者のため、常に全力で立ち回った。
・・・それを何十回もやったので、流石にボロボロになった。
でも、終わった後の清々しさったら・・・、格別だった。
2007年10月01日 とある映画その2
和の風に こころ吹かれて
撮影が1週間ほど空いたけど、俺は忙しく机へ向かっていた。
・・・どうしてもやり遂げたい「宿題」があったんだ。
この「宿題」は、
俺がいままで俳優生活で培ってきた「とある技術」を、
映画のクオリティアップに生かす試みだ。
どのような結果が待っているか、それは分からない。
でも、きっと良い方向へ行くと信じている。
さあ、作業に戻ろう!
・・・作業中、日本が恋しくなっても、大丈夫。
ホテルの近くには、
日本のお菓子を売ってるスーパーがあるんだ。
そこでは、日本人なら誰でも知っている
様々な菓子類を買う事ができる。
・・・遠く離れたこの街で、
懐かしい日本の息吹を感じる事ができる・・・
例えば、「3時のおやつ」と聞いて、
これを想像しない日本人はいないだろう。
・・・まさか海を隔てたこの街で しよラガ と再会しようとは。
パッケージに描かれた新鮮な しよラガ のイラストが
童心を思い起こし、食欲をそそる。
小腹がすいて飴だけじゃ物足りない、って事もあるかもしれない。
そんな時は、クラッカー菓子の定番、「塩入りのチキン」を買おう。
遠足の時に友達と分け合った、淡い思い出が甦るはずだ。
中途半端な「チキン味」とか、「しお味」とかではなく、
本物はやっぱり「食材の持ち味」なので安心できる。
・・・この2つさえあれば、俺は遠い日本に想いをはせ、
どんなに辛い撮影をも、気力で乗り越える事ができるだろう。
さあ、作業に戻ろう!
2007年09月24日 とある映画その2
ノーガードKO
頭の中で撮ったばかりのシーンを思い返していると、
スタッフが深刻な顔で歩いて来た。
「ちょっと、午後のシーンで重大な変更があるの。」
・・・え、・・・俺、何か大変な事でもやらかしたか?
・・・ううむ・・・、やらかした・・・かもなぁ・・・
同じく深刻な顔をして付いて行ったところ・・・
「・・・ユウキ、いいかい、実はね・・・、
午後のシーンだが・・・、」
と、そこまで聞いたところで、急に後ろから歌声が聞こえた。
「ハッピーバースデー・・・♪」
・・・ん?
こ・・・これは・・・、もしかして・・・、も・・・もしかして・・・!?
うおおおおおおおぉおおおおおお!
すげええええええええええええええええええ!!!
嬉しいいいいいいいぃいいいい!!
なんてこった、身に余る光栄だ!
同じく誕生日だったスタッフ2人と、お互いに祝い合った。
・・・そうか、26歳か。
渡米から7年と2ヶ月経ったのか。
この1年も全力で行こう。・・・とにかく前へ!
2007年09月21日 とある映画その2
孤独に笑え
今日のシーンは、今までで一番難しかった。
・・・いや、「難しかった」というか、心許(こころもと)無かった。
セリフは1行だけだったんだけど、
想像力に委ねられる部分が非常に多く、
足元が揺らぐ感覚を覚えた。
コメディーって奴は、本当に難しい。
「良い」「悪い」ではなく、
「面白い」「面白く無い」で判断しなければいけない。
・・・俺は、まだ判断力が貧弱だ。
今考えれるベストを尽くすしかない。
2007年09月20日 とある映画その2
暑い! あちいいいい!
暑い! 暑い! 蒸し暑い!
あっちー! クソあちー!
うえー、暑い! 暑くて息苦しい!
あちいいいいいいい! うえええ
2007年09月19日 とある映画その2
プチ・タイムトラベル
今日は3週間ほど前に撮ったシーンを、
もう一度、別の角度から撮影した。
記憶をたどって、もう一度シーンの流れを甦らせる。
・・・これは・・・、どうして・・・、
なかなかに・・・、むずかしいぞ・・・
なんというか、
自分がビデオデッキに入ったかのような、
堅っ苦しい感覚だ。
・・・とにかく、全力で臨むだけだ。
自分の最大の力で体当たりし、もしそれでも駄目だったら、俺はそれで良いと考えている。
それは自分の限界が見えた瞬間であって、
その限界突破こそが、次の目標になるからだ。
おっしゃ、頑張るぞ!
2007年09月17日 とある映画その2
真のヒーロー
アクションシーンの撮影は実に楽しい。
お互いを信頼し、結束が深くなる
・・・それにしても、「スタントマン」という仕事は本当に凄いと思う。
彼らこそ、本当の意味でのアクションスターだ。
「セットにおけるヒーロー」と言っても良いと思う。
彼らが身体を張ってくれているおかげで、
役者はそこで怪我をして、撮影を中断せずに済むんだ。
自分でやるアクションシーンも、もちろんある。
衝突、転倒、なんでも来い!
身体を張って、笑いを取りたい。
おらー、ばっち来ーい!
2007年09月14日 とある映画その2
忘れてはいけない感覚
SAG(俳優組合)に加入している俳優と、そうでない俳優は、
たとえ同じエキストラであっても、給料も対応も全く違う。
例えば、食事だ。
撮影現場での食事は、基本的にこの順番で食べる。
1、中心スタッフ・キャスト
2、撮影スタッフ
3、SAGエキストラ
4、SAG非加入エキストラ
エキストラの人数が多い時は、メニュー自体が違う事がある。
例を挙げると
「SAG」のエキストラの食事メニューは
野菜3種
サラダバー
ステーキ3種
デザート(ケーキ&アイスクリーム)
「非SAG」のエキストラの食事メニューは
野菜2種
鶏肉
などだ。
こういう対応の違いは、どこの撮影現場でもある。
俺はもう昔から、ずーーーーーーっとそれを見て、体験してきた。
「非SAG」が差別されているのでなく、
「SAG」が優遇されているだけ、と見る見方もある。
どちらにしても、そこには序列がある。
俺は基本的に、食事直後に撮影が無い時は、
非SAGの最後尾に並ぶようにしている。
エキストラは自分と同じ「俳優」だと思う。
同じ飯を食って、同じ現場を分かち合いたい。
2007年09月10日 とある映画その2
第二のはじまり
いよいよ、この都市での撮影が始まった。
・・・初めから、いきなり重要なシーンの撮影だ。
そりゃ、緊張するなってのが無理な話だ。
ヘマをやらかすんじゃないかと、ドキドキする。
まだ、自分がセットに馴染んで居ないのが分かる。
気が張っていて、肩が凝る。
しっかりとリラックスして、シーンに臨まなければ!
・・・でも、カメラの前に立ったら
一瞬で、余計な考えが吹き飛んだ。
自分が自分で無くなる瞬間は、実に不思議な感覚だ。
記憶が入れ替わって、本当の自分がフッと姿を消してしまう。
これからの撮影、常に気合を入れていこう!
投稿者 ユウキ : 23:46
2007年09月07日 とある映画その2
甲殻類の都
・・・いやー、空気がウマい!
いま、撮影でアメリカ東海岸の「とある海辺の都市」に来ている。
これから2ヶ月間ほどは、ここでホテル住まいだ。
さっそく生活の基盤を確保する為、街を散策し、
$14の「パスタクッカー」を買って来た。
これでパスタ食い放題!
しかもお湯を沸かせるので、コーヒーも飲める。完璧だ!
撮影終盤に訪れるであろう「膨大な待ち時間」を有効に使う為、
ちゃっかりと教科書一式を持って来た。
・・・もちろん、辞書一式も持って来た。
これで撮影期間中も時間を無駄にせず勉強する事ができる。完璧だ!
あとは・・・、「演技」を完璧にするだけか。
今日も朝7時から撮影だ。頑張ろう。
2007年08月23日 とある映画その2
大きなダイヤモンド
撮影は・・・、進んでいる。
現在撮影中の「とある諸外国」は、
どーいうわけか、天候が安定せず、
ここ3日ばかし雨が降り続いている。
・・・ところで、話は全然変わるけど、
数日中に、もしかしたら「とある映画」の正体が判明してしまうかもしれない。
でも、それが何なのか分かっても、どうか慌てないで欲しい。
俺に今出来る事は、とにかく自分のベストを尽くす事だ。
明日も大きなシーンの撮影がある。・・・集中しよう。
2007年08月22日 とある映画その2
出陣
朝の7時。
今日からとうとう自分のシーンの撮影が始まる。
集合時間は7時45分。
緊張していない・・・、と言えばウソになる。
やっぱ、それなりに緊張している。
・・・よし、悔いが残らないよう、思い切りやって来よう。
全力を尽くせば、失敗なんて怖くないはずだ!
2007年08月15日 とある映画その2
別世界
「とある映画」の撮影で「とある諸外国」に来ている。
昨日はキャストの初顔合わせがあったんだけど、
みんな凄く良い人で、本当に安心した。
俺には想像も付かない状況だったので、
実はかなり緊張していたんだ。
・・・今から初の読み合わせがある。
いよいよ始まる。さあ、気合を入れていこう。
2007年08月11日 とある映画その2
プラス9
最新版の台本を、昨日の夕方に受け取った。
いくつかキャラクターの変更点があったけど、何とかなると思う。
出発は明日。もう泣き言は言ってられない。
現時点で出来る限りの事はしたつもりだ。
・・・これから2ヶ月間、奢りを捨てて死ぬ気で頑張ろう。
2007年08月04日 とある映画その2
心の迷路
キャストされてから1週間、
一刻一秒を惜しんで役作りに没頭している。
・・・はっきり言って、俺は撮影に参加するのが怖い。
今回はセリフが全て英語なので、
「ブラックニンジャの悪夢」の再来になる可能性が非常に高いんだ。
また酷い演技をして、消えない恥を晒すんじゃなかろか・・・、
実に怖くて堪らない。
プレッシャーの原因はそれだけじゃない。
他のキャストの顔ぶれを聞いて・・・、俺は身体が震えてしまった。
・・・ここに俺の名前があっていいの?
冗談抜きで、他のキャストは「スター」だ。
・・・出発日まであと1週間。
撮影は「とある諸外国」で行われるため、
ミュージカルの最終公演を行ってから、すぐに出発する。
・・・余計な虚栄心は要らない。
とにかく自分の持つ全ての力を使って、体当たりしようと思う。
2007年07月27日 とある映画その2
ヘビと踊ろう!
「とある映画」のオーディションを受けた。
この映画は本部がニューヨークにあるので、
俺はビデオオーディションという形で参加した。
渡された台本を最大限に分析し、
衣装と小道具を揃え、
自分としては万全の体制でオーディションにのぞんだ。
・・・すると、今日、
トップのキャスティングディレクターから
マネージャーに直接、電話があった。
「本当に素晴らしかった。是非とも彼をキャストしたい。」
耳を疑った。信じられなかった。
・・・だってこの映画には、俺の「憧れの人」が出演するんだ。
彼のコメディの技術を盗もうと、
何度同じビデオを観た事か。
その「雲の上の人」と同じシーンで演技をするなんて・・・、考えられない!
うぉおおお!!
撮影まで、現在の予定ではあと3週間くらいらしい。
・・・全てを賭けて頑張ろう。