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2011年08月24日 舞台劇『ブリッジ』
ひも状の織物
一週間前に幕を閉じた舞台劇「BRIDGE」を
別のとある有名劇場で、また公演する運びとなった。
しかも今回は、週4回、6週間もの長期公演だ。
なんでも、その劇場は何もかもがプロフェッショナルらしく、
劇場スタッフにも、出演俳優にも、
ちゃんと給料が支払われるそうだ。
それは凄い!
舞台に出演して給料を貰うって、
かなりレアなんですぜ、ここでは。
・・・でも今はまだ、ぬか喜びできない。
実は今回の公演は、「追加公演」では無い。
「再公演」でも無い。
「リニューアル公演」だ。
全く新しいプロデューサーの下、
全く新しい劇場で、
全く新しいキャストと公演するのだ。
という事は、つまりどういう事か。
・・・前回の公演で震災募金を集めるのを手伝ってくれた、
「アレックス」も、「ジョナサン」も、「アニー」もいない、という事だ。
心強い味方が、一人もいなくなってしまった。
・・・仕方が無い。
新しい劇場の協力を取り付けるべく、
俺自身で新プロデューサーと直接交渉する事にしよう。
俺 「はじめまして。ユウキです。」
デ 「デビッドです。
この前の公演、凄く良かったよ!」
俺 「ありがとうございます。」
デ 「いやー、うちでの公演は、そりゃ凄い事になるよ!
まずセットを、もっとリアリティのある物にするんだ。
プロの『グラフィティ・アーティスト』を雇って、
コンクリートの質感を再現したボードの上に
実際にスプレーでペイントして貰うんだ。
すると・・・リアルな橋の風景になるだろ?
それに、霧を表現するために、スモークも焚くし、
ちゃんと音響を使って、
カモメの鳴き声や、船の汽笛も流す。
観客は、実際に『橋』にいると錯覚するよ!」
俺 「とても楽しみです。」
デ 「・・・で、今日はどうしたのかな。」
俺 「一つお伺いしたい事がありまして。」
デ 「なんだろう。」
俺 「実は、募金の事なんです。
ご存知の通り、僕が演じているキャラクター設定には、
3月に日本で起こった震災が大きく関わっています。
僕は、前回の公演でこの役を演じるにあたって、
被災地に対して何も貢献しないのはおかしいと思い、
募金集めを条件に、参加していたのです。」
デ 「そうだったんだ。」
俺 「・・・幸い、劇場が募金集めに協力的だった事もあり、
たくさんの募金を被災地に送る事ができました。
こちらが、募金の詳細と、送金完了の証明書になります。」
デ 「・・・へえ。」
俺 「・・・そこで、ご相談なんですが、
今回の公演でも、募金に協力して頂けないでしょうか。」
デ 「・・・うちの劇場は方針として、俳優やスタッフに、
できるだけ給料を支払うようにしているんだ。
例えば、俳優が知り合いや友人を劇場に連れて来ると、
20ドルのチケット代金のうち、
5ドルがその俳優自身に還元される。」
俺 「その仕組みについては、あらかじめ聞いていました。
僕はどちらにしても、
そのお金は募金に回すつもりだったので、
それプラス、劇場として何らかの協力を
お願いできませんでしょうか。」
デ 「・・・というと?」
俺 「・・・今回の劇場の、座席数はいくつですか?」
デ 「50席だよ。」
俺 「20ドルで、50席ですね・・・。
・・・では、10ドルで、どうでしょうか。
入口で僕の名前を出せば、
20ドルのチケット代のうち、
10ドルが、震災募金に回される。」
デ 「・・・うーーーーん。。。 10ドルかぁ。
10ドルは・・・・、ちょっと痛いかなぁ。
・・・僕は、他のロサンゼルスの劇場主と違って、
純粋にビジネスとして劇場を運営している。
他の劇場はビジネスとして成立していないから、
俳優やスタッフをタダでこき使っているけど、
僕は、それは間違った姿だと思っているんだ。
俳優やスタッフにも、生活があるからね。
今回、「BRIDGE」をうちの劇場に誘致したのも、
この舞台なら、たくさんお客を呼んで、お金を稼いで、
みんなに給料を支払えると思ったからなんだ。
でも、10ドルだと、劇場が回せなくなってしまう・・・。」
俺 「・・・では、7ドルで、どうでしょう。
20ドルのうち、7ドルが募金箱へ行き、
13ドルが、劇場に入る。」
デ 「13ドルか・・・。」
俺 「・・・いかがでしょうか。」
デ 「・・・うん、それなら、なんとかなる・・・かな。
分かった。協力しよう。13ドルでいいよ。」
俺 「ありがとうございます!」
・・・よし! なんとか劇場の協力を取り付けた。
予定では、10月からリハーサルが始まり、
11月から12月にかけて、6週間の公演予定だ。
新しいスタッフとキャストの下で
「BRIDGE」がどう生まれ変わるのか、今から楽しみだ。