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2008年05月22日 テレビ
木漏れ日
いよいよ子供向けテレビシリーズの撮影日がやってきた。
この数日間、俺は「タクシー運転手」の役作りに没頭していた。
まずは、
「関連書籍」を読みあさり、その職種に必要な知識を身に付け、
「乗務員用の教育ビデオ」を観て、乗務員としてのマナーを学び、
「多くの人の経験談」を読み、それを自分の物として追体験する。
・・・よし、おぼろげながら、
「本来あるべき運転手の姿」がイメージできたぞ。
次に、そのせっかく作り上げた「イメージ」をぶっ崩して、
世界に唯一の「一個人」を、再構成する。
・・・絶対に、「理想化されたタクシーの運転手」になってはいけないんだ。
そんな人間はどこにも存在しないのだから。
時間が許す限り、俺は本気で役作りに打ち込んだ。
しかし、今回は準備期間が足りず、
なんとも中途半端な出来になった。
・・・くそ。仕方が無い。あとはぶっつけだ。
とりあえず今出来る事は全てやったんだ。
++++
俺の集合時間は午後6時。
スタジオの駐車場に設置されたオープンセットで撮影するらしい。
セットの雰囲気に慣れるため、
ちょっと早めの2時間前に現場入りした。
完璧な出来栄えの「タクシー運転手の衣装」に着替えて
待合室で台本を読んでいると・・・、
スタッフから恐ろしい話を聞かされた。
・・・なんでも、とある役者が、
本番直前にセリフを大幅にカットされたそうなのだ。
話によれば、本番直前のリハーサルで
その役者は「コメディのタイミング」を掴めず、
どーも面白くない、「イマイチな演技」になってしまったらしい。
すると、現場の判断で「4行近く」あったセリフが、
一瞬でたったの「2単語」まで減らされてしまったそうだ!
・・・ひえー、恐ろしい。
それじゃ、俺のたった2行のセリフだって、
本番まで残っている保障が全く無いじゃないか。
なんとも厳しい世界だ。
今日の俺のシーンの撮影はというと、かなり楽に終わった。
・・・というか、俺は殆ど何もしていない。
タクシーが路肩に駐車するのを
オープンセットで撮影する予定だったんだけど、
俺には安全上の理由から、
セット内で車を運転する権限が与えられていないんだ。
代わりに、俺に背格好の良く似たスタントマンの方が運転した。
今日撮影するシーンではセリフも無いので、
俺はとにかく影に徹した。
来週は、いよいよセリフのあるシーンの撮影だ。
全てを賭けて準備しよう。